銀座でのできごと
銀座4丁目。
歩道の女性を避けて流れる人の波。
見ると、手には白い杖。
だが、女性は声も発せず、立ち竦んでいる。
「どこかお探しですか?」
と尋ねると
「地下鉄の駅はどこですか?」
すぐ脇に駅への降り口があるが、人が多くて探せなかったのだろう。
「銀座線の入口はすぐそこです。私が案内しますので腕を持って下さい」
肘に添えるように置かれた手は弱々しい。
女性に通路の段差を伝えながら、ゆっくりと降りる。
狭い階段で邪魔にならぬよう、出来るだけ端に寄って降りたのだが、まわりの人も気をかけてくれたようで、横を無理に抜いていく人はいない。
改札横の人通りが少ないところで
「改札口に着きましたよ。定期かPASMOはお持ちですか?」
ここからは、女性だけで大丈夫だと思っていた。
「駅員さんはどこにいますか?」
「呼んできますから、ここで待っていてください」
他の人への案内が終わるのを待ち、
「眼の不自由な方が駅員さんを呼んでます」
と伝えると、
「今すぐ行きます」
と若い駅員は笑顔で対応してくれた。
先に女性のもとへ戻り
「すぐに駅員が来ますからね」
そう伝えると、女性はやっと安心できたのか、
「ありがとうございました」
と笑顔を見せてくれた。
ほどなくして来てくれた駅員に
「よろしくお願いします」
と託してその場を後にした。